台湾から考える日本の介護

最近、台湾に関する記事から、日本の介護保険制度や福祉用具を少し違う視点で見るようになりました。

現場では課題ばかりが目につく日本の介護ですが、海外から見ると、また違った価値があるのかもしれません。

今回は、台湾の介護制度についての記事を読んだことをきっかけに、日本の介護を世界の中で見るとどうなのだろう、と考えたことを書いてみたいと思います。

海外の介護

もともと私は海外の医療や介護現場の状況に興味がありました。

例えば、欧州やオーストラリアで広く実践されている「ノーリフトケア」。
介護する人とされる人の負担を減らす考え方として、日本でも必要性は広く認識されるようになりました。
最近では、診療報酬への位置付けを目指す動きも報じられおり、少しずつ普及に向けた取り組みが進んでいるようです。

また、福祉用具の分野では、ドイツで開催される世界的な展示会「REHACARE」のように、世界中のメーカーや専門職が集まり、新しい技術や製品が発表される場があります。

こうした動きを見ながら、私はどちらかというと、日本は海外からもっと学ぶべきだと思っていました。
介護に対する考え方はもちろん、現場を支える福祉用具やテクノロジーなど、日本にはまだ取り入れられるものがたくさんあると感じていたからです。

台湾の記事

ところが、その考えは最近少し変わりました。
きっかけは、シルバー新聞で読んだ台湾の記事です。

台湾最大の福祉展示会では、多くの日本企業が出展し、日本の福祉用具だけでなく、介護保険制度や福祉用具レンタルの仕組みにも関心が寄せられていることが紹介されていました。

さらに、以前私がブログで紹介した医療機器メーカーの開発者の方から、
「台湾の展示会へ出展する予定で、複数の台湾企業から協業の申し出があった」
というお話を聞きました。

これらのことから感じたのは、台湾では介護市場そのものが大きく動いているということです。

そして、「海外は日本の介護制度や福祉用具にも目を向けているのかもしれない」と思いました。

現場で働いていると、日本の介護は問題点ばかりが目につきます。
だからこそ、海外から日本に関心が寄せられているというのはは、私にとって少し意外な出来事でした。

日本の介護問題

日本において2000年に始まった介護保険制度は、スタートから26年が経ち、
3年ごとに制度改正や介護報酬改定を重ねながら、その時々の社会状況に合わせて見直されてきました。

しかし、要介護者は増え続け、介護を支える世代は減っていきます。
介護保険財政をどう維持していくのかは、今後さらに大きな課題となるでしょう。

制度面でも、利用者負担の見直しや介護報酬改定など、さまざまな議論が続いています。
現場で働いていると、「本当に必要なケアに対して適切な報酬なのか」「現場は加算ありきの動きになっていないか」と思えることもあります。

介護施設、特に有料老人ホームはこの数年で増えている印象があります。
でも、人手不足は深刻です。
介護サービスは介護報酬によって支えられているため、報酬が十分に引き上げられなければ、現場職員の賃金を上げるにも限界があります。
その結果、介護職の人材確保は難しくなっています。

外国人介護士も増えていますが、受け入れ体制や教育、言葉の問題など、新たな課題もあります。

限られた人員で、安全を守りながら質の高いケアを続ける、
その難しさを日々感じています。
だからこそ、介護ロボットや見守りシステムなど、人手不足を補う技術への期待は年々高まっています。

展示会へ行くと、「こんな福祉用具まであるのか」と驚くほど多くの製品があります。
日本のメーカーによる技術開発はとても活発で、現場の課題を解決しようとする製品がどんどんと生まれています。

しかし、価格や導入後の運用、スタッフ教育、人員体制、施設環境などの理由から、良い製品があっても、すぐに現場へ広く普及するとは限りません。

制度も、現場も、技術も、それぞれ前に進もうとしているのに、介護の現場にはまだ多くの課題が残されていると感じます。

世界から見た日本

このように、高齢化が進んだ日本では、介護の課題が山積みで、どうしても問題ばかりに目が向いてしまいがちです。
しかし、日本は、世界でもいち早く超高齢社会を迎え、その課題と向き合ってきた国とも言えます。

2000年に介護保険制度が始まって以来、四半世紀にわたり制度を見直しながら、
・地域包括ケアシステムの構築
・在宅介護の推進
・福祉用具貸与制度
・認知症施策の整備
・介護テクノロジーの活用
など、さまざまな取り組みを行ってきました。

日本では当たり前のように感じるこれらの仕組みも、世界では当たり前ではありません。

例えば台湾では、日本の介護保険制度を参考にしながら長期介護制度(長照)の整備が進められています。
日本のような福祉用具貸与制度はまだ十分には整備されておらず、そのシステムや活用方法にも関心が寄せられているようです。

もちろん、日本の制度も良いところばかりではありません。
国によって文化や家族観、社会保障制度が違うため、日本の仕組みをそのまま取り入れることは難しいでしょう。

それでも、超高齢社会の中で制度をつくり、何度も見直しながら試行錯誤を重ねてきた経験そのものは、これから高齢化が進む国々にとって参考になる部分があるのではないでしょうか。

そして、福祉用具についても同じことを感じます。

私は海外の展示会にはまだ行ったことがなく、海外製品にもあまり触れたことがありません。そのため、これはあくまで私個人の印象ですが、国内の展示会で日本メーカーの製品を見ると、現場の細かな困りごとに丁寧に向き合い、「こんなところまで考えられていてすごい!」と感じる製品に数多く出会います。

そんな印象を持っていた中で、台湾に関する対談記事に興味深い内容がありました。

そこでは、台湾はICTや精密工業、製造業に強みがあり、日本の福祉用具の経験や現場の知見と組み合わせることで、共同開発の可能性を広げていきたい、という考えが紹介されていました。

つまり、期待されているのは日本の福祉用具そのものだけではなく、日本が積み重ねてきた現場での経験や知見でもあるということです。

日本が高齢化という課題に向き合い、制度をつくり、現場で試行錯誤を重ね、その中から福祉用具やケアを発展させてきた経験そのものにも価値があるのかもしれない、
台湾の記事を読み、そんなことを考えました。

これから

今回、台湾の記事をきっかけに、日本の介護をこれまでとは少し違う視点で見ることができました。

私は普段、看護師として働きながら、特許や福祉用具について調べ、現場の視点から情報を発信しています。
特許を読み、展示会へ行き、開発者の話を聞くようになったのも「現場の課題を技術でどう解決しようとしているのか」を知りたかったからです。

もちろん、国によって文化や生活習慣、家族観、社会保障制度は違います。
そのため、日本の介護制度や福祉用具をそのまま他国へ当てはめることはできないでしょう。

でも、高齢になることで起こる身体機能や認知機能の変化は、国が違っても大きく変わるものではありません。

転倒、排泄、認知症、食事など、
高齢者が直面する課題には、多くの共通点があります。

だからこそ、日本で積み重ねてきた経験や福祉用具が海外で参考になることもあれば、日本も海外の制度や技術、介護の考え方から学べることがあるのではないかと思います。

今回の記事を書きながら、これからは台湾など、高齢化が進む国々が日本の制度や福祉用具をどのように取り入れていくのか、そして日本は海外から何を学べるのかにも目を向けていきたいと感じました。

これからも、現場で本当に役立つものは何かを考えながら、自分なりの視点で発信を続けていきたいと思います。

<参照>
・シルバー産業新聞 2026年6月10日号
https://www.care-news.jp/interview/yVbiG

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