前回は、床ずれナースシリーズに使用されている「フュージョン」という立体編物について、その構造を関連している特許から読み解いてみました。
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今回は、そのフュージョンを使用した製品の一つである、黒田株式会社の『リハビリ用スティック(床ずれナース®)』を取り上げます。
正直なところ、以前の私は、このような握り棒はタオルなどで代用すればいいと思っていました。
しかし今は、実際に母にも使用しています。
また、現場で様々な拘縮予防用クッションや代用品を見てきた経験からも、専用品には専用品ならではの工夫があると感じています。
この記事では、手が拘縮するとどのような問題が起こるのか、なぜ握り棒が使われるのか、そしてリハビリ用スティックの特徴について、実際の体験も交えながら紹介していきます。
なお、本記事は筆者個人の見解・調査に基づいた内容です。
内容の正確性を保証するものではなく、紹介する製品の購入・使用は必ずご自身の判断と責任で行ってください。
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本記事の英語版はこちら→Rehabilitation Stick for Contracted Hands: A Nurse’s Look at Bedsores Nurse(準備中)
拘縮した手で起こるトラブル
四肢(手足)の拘縮は、脳血管障害や神経疾患、長期間の廃用などによって起こることがあります。
手が拘縮すると、指が手のひらへ強く握り込まれた状態になってしまうことが少なくありません。
すると、次のような問題が起こります。
○爪が手のひらに食い込み、皮膚が傷つく
○指の間を洗いにくくなり、汚れや悪臭につながる
○湿気がこもり、真菌感染の原因になる
これらはどれも、私自身が現場でよく出くわすトラブルです。
拘縮した手は、開くこと自体が大変なことも多いです。
そして開いてみると、汗や皮脂がたまり、独特のきつい臭いがすることがあります。
さらに湿った状態が続くことで皮膚がふやけたり、真菌感染による湿疹につながったりすることもあります。
手の拘縮への対策
こうした拘縮に対しては、悪化しないようにリハビリや関節可動域訓練などが行われます。
しかし、日常的に手を動かすことが難しい状態では、どうしても拘縮が進んでしまうケースが多くあります。
そのため現場では、更なる拘縮予防や握り込みによるトラブル対策として、手に何かを握ってもらうことがあります。

何かを握っておくことで、
・爪の食い込み予防
・皮膚トラブル予防
・清潔保持
・悪臭予防
・握る・離す動作のきっかけづくり
などにつながる可能性があります。
私自身も、利用者さんだけでなく、介護をしている母にも同じ対応をしています。
現場でよく使われる代用品
手に挟むものとして、介護用の専用の握り棒があります。
でも実際の現場では、ガーゼハンカチやミニタオルなどを代用品として使う方が多い印象です。
これらは安く、手に入りやすく、綿素材で肌触りも良いため、一見するとよさそうに思えます。
しかし、一日使ったあとに交換してみると、かなり湿っていることがあります。
それは、綿は汗をよく吸いますが、その分乾きにくいためです。
実際、湿ったハンカチを長時間握り込んでいることで、手のひらにも湿気がこもっているように感じることがあります。
また、その人の手の大きさや拘縮の程度によっては、サイズが合いにくかったり、位置がずれたり、外れてしまったりすることもあります。
以前、病院でディスポの手袋を膨らませて、握り棒代わりにしているのを見たことがあります。
形としては悪くないのですが、通気性はほとんど期待できません。
こうした経験から、代用品でも十分対応できることはありますが、毎日使い続けることを考えると、通気性やサイズ感まで考えられた専用の製品にも意味があるように感じています。
リハビリ用スティック(床ずれナース)の特徴
リハビリ用スティックは、拘縮した手に握ってもらうための小さな棒状のクッションです。
手を強く握り込むことで起こる皮膚トラブルへの対策や、更なる拘縮の予防、握る・離すといった動作のリハビリを目的として使用されます。
直径のサイズ展開があり、手の大きさや拘縮の程度に合わせて選択でき、指に引っ掛けて落下しにくくする工夫もされています。
なぜフュージョンが握り棒に向いているのか
握り棒は、様々なメーカーから発売されています。
中にはビーズなどクッション性のある素材を使用したものもあり、指に引っ掛けて落ちにくくする形状も含め、全体的によく似た製品が多い印象です。
私自身、現場でいくつかの種類を見てきましたが、大きな違いを感じることはあまりありませんでした。
リハビリ用スティックも、見た感じは他の握り棒と大きく変わるわけではありません。
でもそんな中で特徴的なのが、前回紹介したフュージョンを使用していることです。
そもそも握り棒は、蒸れやすい場所で使用することが前提の製品です。
経験上、拘縮した手の中は想像以上に蒸れます。
先ほど挙げた悪臭や皮膚トラブルの多くも、その湿気が関係していると私は感じています。
そう考えると、握り棒に求められるのはクッション性だけではなく、通気性や乾きやすさも重要なのではないかと思います。
フュージョンは立体構造の中に多くの空気層を持っています。
そのため通気性が高く、乾きやすいという特徴があります。
また、前回特許を調べた際にも触れましたが、連結糸の構造によって押されても元に戻りやすく、繰り返し圧縮されても弾力感を維持しやすい素材です。
毎日握られ、洗濯されることを考えると、このような特徴は握り棒との相性が良いように思います。
実際に使って感じたこと
現場で色々な握り棒を触ってきましたが、正直なところ、専用品同士で明らかな差を感じることはあまりありません。
また、拘縮がある利用者さん自身から「これの方が握りやすい」とはっきり聞くことができるケースも多くありません。
そのため、最終的には手の大きさや拘縮の程度、その人に残っている手の動きによって、合う製品は変わると思います。
それでも私は、実際に母にも使用してみて、やはり専用の製品は使いやすいと感じています。
握りやすい形に作られており、拘縮の程度でサイズも選べる、
指をかけることができるため、ずれにくい、
そして蒸れにくさも実感できることは、大きなメリットだと思っています。
実際、タオルやガーゼでも十分代用はできます。
しかし使い続けることを考えると、専用品にはそれなりの価値があるように感じました。
おわりに
拘縮した手のケアでは、何かを握ってもらえばよいのではなく、手のひらの環境をどう保つかという視点が大切だと思います。
そう考えると、リハビリ用スティックは単なる握り棒ではなく、通気性や乾きやすさ、耐久性といった点から、拘縮した手の環境を整えるために工夫された製品と言えそうです。
派手な機能があるわけではありませんが、蒸れや臭い、皮膚トラブルといった日常的な困りごとに向き合った結果、生まれた製品なのだろうと思いました。
※本記事の内容は参考情報であり、正確性を保証するものではありません。
製品の購入や使用はご自身の判断と責任でお願いいたします。
本ブログでは、主に福祉用具や医療品が、現場でどのように受け止められるか、どのような場面で価値を発揮しやすいかといった点にも目を向け、医療・介護の現場の視点から、企業・事業者と現場をつなぐ橋渡しを意識して発信しています。
こうした視点をもとに、看護師としての現場経験・特許への知見を活かし、医療材料・ケア用品の解説、技術記事の執筆、製品レビュー、市場展開につながるサポートなどを行っています。
(詳しくはこちら→サービス一覧)
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参照
黒田株式会社 http://www.t-nurse.com/pageparts.html
旭化成アドバンス https://www.asahi-kasei.co.jp/advance/jp/business/apparel_and_fiber/cubit.html
