注射用水から見る浸透圧

『注射用水』とは、薬の希釈や溶解に使われる水です。在宅では注射より、胃瘻や尿カテのバルンの固定水としてよく使われます。

化学の学習で逆浸透法・イオン交換樹脂について調べると、身近で使用している注射用水の製造にそれらが活用されていると知りました。

逆浸透法を知るためには浸透圧の概念の理解が必要です。

浸透圧・注射用水をキーワードに、製造方法や注射の痛みとの関連を探っていきます。

浸透圧とは

浸透とは、濃度の異なる溶液が半透膜で仕切られた時、それを通して一方の溶媒が他方の溶液の中にまじって行く現象を指します。

濃度を一定に保とうとして水分が濃度の薄い側から濃い側に移動します。水の移動により生まれた水位の差に相当する圧力のことを浸透圧といいます。

これは、物質が自然に高濃度の場所から低濃度の場所へ移動しようとする力を反映しています。つまり、水分子などは、浸透圧の働きにより半透膜を通過して濃度差をなくそうとします。

引用:https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-51.html

逆浸透法

逆浸透法は浸透の原理が技術的に応用されたものです。浸透とは逆の方向に働く力を利用し、溶質濃度が低い方から高い方へ、水分子を移動させます。

そのためには、浸透圧以上の圧力をかける必要があります。圧力をかけると、水分子は半透膜を通過して溶質濃度が高い方へ移動します。

その結果、不純物は膜の一方に留まり、純粋な水分子は他方へと移動します。

この原理は、海水から真水を取り出す技術に活用されています。

引用: https://purewateratelier.com/hpgen/HPB/categories/6913.html

イオン交換樹脂

イオン交換樹脂も水の不純物を取り除くため用いられます。イオン交換樹脂とは、特定のイオンを吸着し、それと異なるイオンを放出する高分子化合物です。

これは陽イオン交換樹脂の模式図です。

p-ジビニルベンゼンがポリスチレン鎖を架橋するように連結した網目構造になっています。分子中にスルホ基(-SO3H)を交換基として持ち、このスルホ基が電離して生じたH+と溶液中の陽イオン(Na+など)とを交換することができます。

陰イオン交換樹脂も、陽イオン交換樹脂と似た働きをします。

具体的には、樹脂中のヒドロキシドイオン(OH-)と溶液中の他の陰イオン(Cl-など)を交換します。これにより、溶液から特定の陰イオンが除去され、その代わりに樹脂からOH-が放出されます。

このプロセスで、溶液から特定のイオンが除去され、その代わりに樹脂から異なるイオンが放出されます。これが「イオン交換」の名前の由来で、さまざまな用途で用いられます。

注射用水の製造方法

注射用水は体内に直接注入されるため、不純物を取り除いたものでなくてはなりません。

注射用水の製造には逆浸透法やイオン交換樹脂の他にも以下の様ないくつかのプロセスがあります。

引用:https://www.ngk.co.jp/product/cm-medical-water.html

まず、活性炭ろ過により大きな不純物が除去されます。

その後、逆浸透膜やイオン交換樹脂を使用して水から微細な粒子や他の不要な物質を取り除きます。さらに、UVランプを使って水中の微生物を除去します。

最終的に蒸留器を使って最後の微細な不純物を取り除くことで、安全で純度の高い「注射用水」が完成します。

EDIはElectric De-Ionization System、連続電気再生式イオン交換器のことです。

樹脂が特定のイオンを吸収し尽くすと、樹脂が再びイオンを吸収できるように「再生」が必要になります。通常これは、化学的な再生剤を使用して行われます。

連続電気再生式イオン交換器は、この再生プロセスに電気を用いるイオン交換器です。

注射の痛みと浸透圧

このように製造された注射用水は、その名の通り薬液と混ぜて注射に用いられます。

ここで注射の痛みと浸透圧の関係に焦点を当ててみます。

注射の痛みは針を刺す時と薬液を入れる時に生じます。

針を刺す痛みは、皮膚に痛みを感じる痛点があるためです。

そして、針を刺したあと入れる薬液による痛みは、薬と血液間のpHや浸透圧の差によるものです。

浸透圧とは、私たちの体において細胞内と細胞外の水分バランスを維持する大切な働きをしています。細胞膜は半透膜と呼ばれ、水分は通過できますが、電解質などは通過できません。これにより、細胞の形と機能を維持しています。

体液の浸透圧は一定に保たれており、これとほぼ等しい浸透圧をもつ液を等張液といいます。これより低い浸透圧の液を低張液、高い浸透圧の液を高張液と呼びます。

細胞内外の濃度が同じ場合には、細胞内外で水分の移動はありません。

ところが、細胞外液の濃度が細胞内液よりも低いと水分が細胞内に入り、細胞が膨らみます。逆に、細胞外液の濃度が細胞内液よりも高いと細胞内の水分が出て行くので、細胞は縮んでしまいます。

引用:https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

注射液の浸透圧が血液より高い時、注射液が血管に注入されると、血管周囲の細胞から水分が抜け出て細胞がしぼみます。

反対に注射液の浸透圧が血液より低い場合は、血管周囲の細胞が水分を吸収し、その結果、細胞が膨らみます。

このような細胞の収縮や膨張により、周囲の組織が刺激され痛みを感じるのです。

薬液の浸透圧を操作することはできないため、痛みの緩和には、それ以外の痛みの要因に対してアプローチするしかなさそうです。

痛みは心理的な要因も関わるため、コミュニケーションも大切なのではないかと思います。小児科の先生はその辺が上手いですよね。

患者さんはあの人はうまいだの下手だのとよく言っていますが、それはその辺りの技量の違いもあるのかもしれません。

まとめ

注射用水を作る過程を学んだことで、逆浸透法やイオン交換樹脂といった技術がどう活用されて、高い純度の水を生成するのかを理解することができました。

注射用水自体は単独で使用されることはなく、それが薬剤と混ざると浸透圧が変化します。

この浸透圧の違いが注射の痛みに影響を及ぼすことがあるため、注射を投与する際には薬剤の性質を考慮し、適切なケアを行おうと思います。

参照

株式会社パールエース https://www.pearlace.co.jp/

株式会社大塚製薬工場 https://www.otsukakj.jp/

三菱ケミカル株式会社 https://www.diaion.com/index.html

医薬品製造の基礎知識 https://industrymedicine.com/c2/35.html

日本ガイシ 製薬用品システム https://www.ngk.co.jp/product/cm-medical-water.html

コメント

タイトルとURLをコピーしました