CVポートの感染リスクに関わる構造

CVポートとは、皮下に埋め込まれ使用される、長期的な薬液投与のための医療デバイスです。

実は、治療の現場である病院を離れた今の職場の方が、このCVポートをよく扱っています。

この記事では、CVポートについて、普段行っている看護的な管理ではなく、その構造や仕組みについて、とあるCVポートの特許明細書の内容とともに見ていきたいと思います。

※本記事は、個人の見解と調査に基づき執筆しており、情報の正確性や最新性を保証するものではありません。

CVポートとは

中心静脈カテーテルの一種で、皮下埋め込み型カテーテルのことです。

引用元:https://cardinalhealth-info.jp/column/support-cvport-knowledge

皮下に埋め込まれたポートからカテーテルが中心静脈に繋がっているため、皮膚からポート部に針を刺すことで中心静脈に薬液を投与できる仕組みになっています。

CVポートの構造

CVポートは、カテーテル・接続部・チャンバー・セプタム(穿刺される部分)からなります。

引用元:https://www.jsir.or.jp/wp-content/uploads/2020/01/CVP20200107.pdf

ポートの中心のセプタムという部分に針を刺し、チャンバーまで貫くことで、そこから繋がるカテーテルから静脈に薬剤を投与できる、というのが基本的な仕組みです。

引用元:https://cardinalhealth-info.jp/column/support-cvport-knowledge/

余談ですが、ポートには、上のイラストのように先端が曲がった専用の針(ヒューバー針)を使わなくてはいけません。

なぜならセプタムは、シリコンゴムなどの素材でできており、ヒューバー針以外の一般的な注射針を用いると、刺した部分のシリコンゴムが針先でくりぬかれてしまうことあるからです。これをコアリングといいます。

セプタム部分は何度も針の抜き差しが行えるようになっていますが、コアリングによってその機能が損なわれてしまうのです。また、削られたゴムがポート内部に残ってしまうこともあります。

専用のヒューバー針は、通常の針と異なり針先が刺入角度と平行にカットされているためコアリングが起きにくくなっています。

引用元:https://www.f-wajirohp.jp/storage/uploads/files/chiikikenshu/20210716_document.pdf

点滴の種類

CVポートは点滴のためのデバイスです。

ここでは点滴の方法について簡単に説明していきます。

点滴の方法には、末梢点滴皮下点滴中心静脈点滴とがあり、それぞれ薬液を体内のどこに入れるかが異なります。

末梢点滴:一般的な腕から行われる点滴です。末梢の静脈、つまり腕や脚の静脈に針を刺します。

皮下点滴:血管ではなく、皮下組織に針を留置します。皮下組織とは皮膚の表面である表皮・真皮と皮下脂肪の間の部分のことです。ゆっくりと吸収されるため、急性期の治療の場である病院ではあまり行いませんが、看取り期などによく行われるため、在宅ではよく見ます。

中心静脈点滴:中心静脈という名前の静脈があるわけではなく、カテーテルの先が末梢(四肢)じゃない静脈に入っている、と考えます。末梢点滴では静脈炎を起こすため入れることのできない高カロリー輸液の投与や、心臓に速く確実に届ける必要のある薬剤の投与時に行います。また、末梢の血管がない場合(正しくは、刺せるような血管が見つからない状態)にも中心静脈からの点滴が選択されます。

CVポートのメリット

CVとはCentral Venousの略で、CVポートは中心静脈カテーテルの1つです。

一般的な中心静脈カテーテル(CVカテーテル)は、内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈、上腕の静脈に直接挿入され、皮膚から体外にカテーテルが露出した状態になります。

引用元:https://knowledge.nurse-senka.jp/500238

一方CVポートは、皮下に留置したポートからカテーテルが中心静脈に接続されています。使用時に皮膚を通してポートに針を刺さなければ、普段は体外に露出する部分がなく、外部と接触しません。

そのため、体外に露出するカテーテルと比べると、外部との接触が少ない構造であり、感染リスクを考えるうえで利点の一つとされています。
体外とつながるルートがあることは、感染リスク要因の一つですからね。

また、CVカテーテルは挿入部が常に露出しているため、日常生活での動作や入浴時に注意が必要ですが、CVポートは皮下に埋め込まれているため、日常生活への影響が少ない場合があります。

CVポートの適応

病院で働いていた頃は、CVポートといえば主に抗がん剤の投与目的でした。

抗がん剤投与は長期にわたるため、何度も刺す苦痛や末梢静脈からの投与で起こる合併症予防の観点からポートを造設するケースが多いです。

しかし今の現場・在宅や施設では、高カロリー点滴投与での使用がほとんどです。

疾患や加齢により食べることが難しくなった方の胃ろうなどの経管栄養以外の選択肢の1つで、人によっては、“延命”、と取る方もいると思います。

このそもそもの選択について、いいのか悪いのか考えてしまうこともありますが‥今回はそういった議論は一旦置いておきます。

とはいえ、中心静脈からの投与が必要と判断される場合には、感染リスクや管理のしやすさも含めて、在宅療養への移行時に検討される選択肢の一つになることがあります。

特許の解説

CVポートについてこちらの特許明細書を読みました。

【公開番号】特開2023-55913(P2023-55913A)
【公開日】令和5年4月18日(2023.4.18)
【発明の名称】皮下埋込型ポートおよび皮下埋込型ポートの製造方法

※以下画像は上記の特許明細書より引用・参考にしています

解決しようとする課題

発明の解決課題は、弾性体ハウジングとの隙間を防止又は小さく抑えることです。

この性能を理解するために、CVポートの構造をもう少し詳しく見ていきます。

ハウジングとは、機械装置などを包み、保護する覆いの部分のことです。

弾性体は、柔軟性のある材料で、今回の発明においてはシリコーンゴムなどが使用されいます。
薬液の注入時に針を刺しても元の形状に戻る性質を持っており、シリコーンゴムは、耐熱性、耐水性、耐薬品性などを持つ素材として知られており、体液に触れる医療関連材料にも用いられています。

ベース部分のハウジングの上にシリコン製の「セプタム」と呼ばれる弾性体が載っていて、それをさらに外側のハウジングで覆って固定している構造になっています。

従来のCVポートでは、弾性体とハウジングがフィットせず、下の図の部分に隙間が生じることがありました。

画像引用元:特開2023-55913 (2023年4月18日公開), 「皮下埋込型ポートおよび皮下埋込型ポートの製造方法」

こちらの特許では、このような隙間に薬液が滞留することで、感染や閉塞につながるおそれがあることが課題として挙げられています。

課題解決のための構造と仕組み

では、この特許ではどのような仕組みによって、弾性体とハウジングとの隙間を防止または小さく抑えようとしているのかを見ていきます。

弾性体圧縮前

ハウジングに組み付ける前の圧縮前の弾性体は、図に示されているように110の部分に凹みがあります。

こちらの特許では、この形により、後の圧縮時に弾性体が変形しやすくなり、段差に沿ってフィットしやすくすることが意図されています。

画像引用元:特開2023-55913 (2023年4月18日公開), 「皮下埋込型ポートおよび皮下埋込型ポートの製造方法」

圧縮し始める段階

ハウジングを組み付ける際、弾性体の外周部分が上下方向で圧縮されて、弾性体の118の外周部分120に対して、下からベース部分であるハウジングの周壁部60が押しつけられます。

この圧縮によって、110の円形凹部が下方向に押され、凹みが次第に小さくなります。このとき、114の外周面は矢印A2の方向に引っ張られ、70の上端面にフィットし始めます。

ハウジングにフィットする段階

特許では、圧縮が進むと、110の凹部が小さくなり、弾性体の外周部分が68(段差状部)70(上端面)に沿いやすくなると説明されています。

画像引用元:特開2023-55913 (2023年4月18日公開), 「皮下埋込型ポートおよび皮下埋込型ポートの製造方法」

組み付ける前の凹みによって、弾性体が変形する余地を持ち、段差部分に沿いやすくする構造と考えられます。
もし凹みがなければ、圧縮による変形の余地がなくなり、フィットしづらくなり隙間ができる可能性があります。

隙間を最小限にする

特許文献では、圧縮によって弾性体が変形し、124の膨らみ面70に接する構造が示されています。

この段階で、比較的小さな圧力でも膨らみ面12470の上端面にフィットしていることが、隙間ができにくいポイントなっています。

大きな圧力をかけずにフィットさせることで、弾性体が過度に変形することを防ぎ、隙間の発生リスクを減らすことができます。

特許では、このような構造により、弾性体とハウジングとの隙間をできにくくし、隙間が生じた場合でも小さく抑えることが目指されています。

その結果、薬液の滞留を抑え、感染や閉塞につながるリスクを低減することが期待される構造として説明されています。

おわりに

CVポートの特許明細書において、その構造が技術的課題を解決する手段として非常に重要なポイントであるため、ほとんどが構造の説明でした。

そのため、図を見ながら番号を参照して構造の説明を追っていくことが難しく感じました。

日常業務で使っている機器であるのでその技術的な側面を理解しやすかったのですが、普段考えたことのない内部構造やその技術的な背景について学びになり、取り扱い時に必要な知識の確認にもなりました。

参照

特開2023-55913 (2023年4月18日公開), 「皮下埋込型ポートおよび皮下埋込型ポートの製造方法」

神谷光男, 看護技術ベーシックス, 藤野彰子ほか(監修), 医学芸術社, 2010

Cardinal Health:https://cardinalhealth-info.jp/

ナースのヒント:https://j-depo.com/news/port.html

Wikipedia, “ハウジング”:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0_(%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E8%A6%81%E7%B4%A0)

Wikipedia, “シリコンゴム”:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%A0

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