5類のコロナについて考える

先月、職場の併設高齢者施設で、初めて新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生しました。

1人出たら、あっという間に広まり、スタッフも次々と感染しました。

生き残りの一人だったので、本当につらかったです。

今回調べた最新の情報や体験から、改めて新型コロナウイルス感染症について考えてみたいと思います。

尚この記事の内容には、感染の専門家ではないただの看護師としての個人的な見解・解釈が含まれています。

5類への移行と日常生活

新型コロナウイルス感染症の位置づけが、2類感染症から5類感染症に変更され約3ヶ月経ちました。

この夏は各地で何年ぶりかの夏まつりが開催されており、世の中は日常を取り戻しつつある印象です。

今、コロナ陽性、となるとどうなるのか、日常生活に関わる行動制限とお金について見ていきます。

行動制限の現状

現在、陽性者の外出自粛要請はありません。

陽性になっても保健所からの指示はなく、『発症後5日間経過、かつ解熱し症状が軽快後24時間経過するまで外出を控えること』が推奨されています。

かかったスタッフに聞いたところ、5日間自粛した方がいいと案内されたり、特に何も言われなかったり、医療機関によって言われることが違うようです。

子どもに関しては、学校保健法で『発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日経過するまで』出席停止が求められています。

高齢者施設のスタッフにおいては1週間から10日間程度はうつしやすいため注意が必要、と自治体から通知がありました。

医療費の変動

医療費は、一部を除き自己負担となりました。

2類の頃は、検査や薬は公費だったので、実際の支払いは初診料2000円程度のみでしたが、今は保険診療となり、3割の人で解熱剤の処方等含めて4000円程度の負担になります。

さほど負担が増えている感じはしませんが、抗ウイルス薬を希望するとなると話は別です。

この抗ウイルス薬、実はかなり高いお薬です。

1回の治療で5~10万円かかり、3割負担の人で、他の診察費用を含めて2~4万円かかるようです。

もっと高い薬もありますが、今年の9月までは自己負担なしで処方してもらえます。

また、今年9月末まで、新型コロナウイルス感染症治療での入院費は高額療養費の自己負担限度額から最大2万円減額されます。

高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担(食事・差額ベッド代除く)が一定の上限額を超えた場合に、超過した分が払い戻されるという、とてもありがたい制度です。

所得や年齢によって変わりますが、例えば年収370万~770万円の人だと実質の自己負担は1ヶ月8万円程度です。

コロナでの入院の場合は、ここから更に負担額が2万円減るいうことになります。

医療・介護現場の現状

5類に変わったからといって、ウイルス自体が急に無害なものに変化したわけではありません。

現在感染者は増加傾向にあり、7月は感染者が急増していると自治体から注意喚起がされていました。

以前と違い、厚生労働省や自治体からの隔離期間設定や濃厚接触者の特定、施設全体のスクリーニングは指示されておらず、推奨されている内容をもとに、それぞれの病院・施設で感染対策を行っています。

今回施設では5日間の隔離を行いましたが、近隣の急性期病院では隔離期間は10日間とのことです。

外来受診に関して厚生労働省は、重症化リスクの高い人の受診のみを推奨しています。

つまり、多くの人にとっては自宅で休んでいれば治るレベル、ということでしょう。

しかし実際は、発熱者は事前連絡を必要とするクリニックが多く、発熱者を分けての対応が続いています。

医療現場のコロナ特別扱いは変わっていないのが現状です。

コロナに関するデータ

定点把握による感染者数

現在新型コロナウイルスの感染者数の把握は、全数把握から定点把握に変更されています。

引用:https://www.tokyo-np.co.jp/article/195450

全数把握では、各医療機関からの届出によりすべての感染者数が毎日公表されていました。

5類に移行後の定点把握では、あらかじめ指定した医療機関からの一週間ごとの報告が行われています。

この数字により感染者数の増減の動向が把握できます。

感染の動向を追うと、5類になった5月連休後から、全国で感染者数が増加していることがわかります。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/001131133.pdf

日本人の抗体(抗N抗体)保有率

もう一つ、新型コロナウイルスの抗体保有率という気になるデータがあります。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/001109157.pdf

このデータは抗N抗体を基にしたもので、過去に感染した人の割合を示しています。

厚生労働省の調査によると、今年5月末の時点で、全体での抗体保有率は42.8%で、この数字は今年2月から横ばいの状態となっています。

2つのデータから

感染者数が増加しているのにも関わらず抗体保有率が横ばいということが何を意味するのか考えてみました。

このことから、新型コロナウイルスの抗体は短期間で失われている可能性があります。

また、ウイルスの変異が早く、次々と新しい株に感染している可能性がある、ということが言えるのではないでしょうか。

そして、抗体の持続性が短い、またはウイルスが変異することで、新型コロナウイルスに対する集団免疫の獲得は難しいということも考えられます。

ただし、抗体保有率のデータに関しては、献血ルームを訪れた人々が対象であり、小児や高齢者は含まれていません。

感染者数と抗体保有率のデータはその対象が違うことから、この情報を単純に比較するのは適切ではないのかもしれません。

ワクチンはどうすべきか?

新型コロナウイルスワクチンは、来年3月末まで無料で接種することができます。

そのため、次々送られてくる○回目のワクチン接種の案内を見て、どこまで打つべきか悩んでいる人も多いと思います。

今回のクラスターを経験して、安全性の議論は一旦おき、個人的には高齢者はワクチン接種をした方がいいと考えています。

というのも、今回のクラスター発生時、施設内の高齢者の大半は今年5月に6回目のコロナワクチン接種を終えていましたが、接種した方で重症化した方はいませんでした。

一方で、ワクチンを接種していない方は中々解熱せず隔離が長引く傾向にありました。

これはかなり限定的なデータなので、このことから、ワクチン=有効、と言いたいわけではありません。

施設で6回目接種の希望を伺った時に、ご家族様から「5類になったしもういいかな?」とよく聞かれたため、そのように考えている人が多いと感じました。

『5類になったから必要ない』ではなく、重症化リスクのある人に関しては、メリットデメリットを考慮して判断すべきであると思います。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に変更されたものの、最近の施設でのクラスター発生を受けて、感染症の対応の重要性を再認識しました。

医療や介護の現場では、感染の拡大が医療体制全体に影響を及ぼす恐れがあるため、今でも慎重な対応が続けられています。

5類になって、コロナ対策は個人の判断に任せるという傾向ですが、公的な方針や支援は今後も変化していくと思います。

メディアからの偏った情報のみでなく、日頃から正確な最新情報を得ておく必要性を感じました。

参照

厚生労働省 新型コロナウィルス感染症について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

コロナ薬「ゾコーバ」保険適用に 公定価格5万円超 当面は公費負担 https://www.asahi.com/articles/ASR386FH7R38UTFL00R.html

新型コロナウイルス感染症に関する抗体保有状況調査について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00132.html

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について https://www.mhlw.go.jp/content/001131133.pdf

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