最近、高額療養費制度の改正についてニュースでよく取り上げられていますよね。
テレビでも頻繁に報道されているため、制度を利用していなくても気になっている人は多いのではないでしょうか。
ある番組のコメンテーターが「高額療養費の自己負担を増やすだけでなく、無駄な医療費を削減できないのか?」と話しているのを聞き、「その通り!」と思いました。
さらに続けて、抗生剤の処方の必要性について話していましたが、私は「いや、それよりもっとたくさん無駄な薬があるけど。」と言いたくなりました。
昨日の報道によると、この改正は一旦見送りとなったようですが、高額療養費制度や、日々感じている医療費の無駄について、改めて考えたいと思います。
高額療養費制度について
制度の仕組み
高額療養費制度は、1か月の医療費が一定額を超えた場合に、その超えた分のお金が補助される制度です。
例えば、病気やケガで入院・手術を受け、医療費が100万円かかった場合、日本では公的な医療保険により現役世代の自己負担は3割となるため、本来の負担額は30万円になります。
すでに払う金額は減っているものの、いきなり30万円の支払いが必要となると、大きな負担になりますよね。
そこで、高額療養費制度を利用すると、さらに自己負担が軽減されます。
この制度では自己負担限度額の計算が、
「基準額(定額部分)」+「一定額を超えた部分の1%負担」
という仕組みになっており、収入に応じた「応能負担」として決まるため、人によって負担額が異なります。また、70歳以上かどうかでも限度額が変わります。

画像引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/000333276.pdf
具体例として年収370万~770万円の場合の自己負担限度額は、
『80100円 +(医療費総額 – 267000円)× 1%』
となります。
つまり、医療費が100万円の場合、最終的な自己負担額は約8万7000円 ですむのです。
高額療養費制度は、急な医療費負担の増加を抑えるために作られた仕組みで、特にがんや難病などで長期入院が必要な患者にとって、治療を続けやすくするためのありがたい支援となっています。
改正が決まっていた内容
⚫︎2025年8月から2026年8月にかけて、段階的な自己負担限度額の引き上げ
⚫︎所得区分が5区分から13区分へと細分化

画像引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001393881.pdf
その段階は3つあり、
1段階目 2025年8月、自己負担限度額の引き上げ
2段階目 2026年8月、所得区分が細かく分かれ、負担増
3段階目 2027年8月、さらに負担額を増額
と段階的に行われる予定でした。
5つの所得区分を13区分へ細分化することで、より所得に応じた負担となり公平にする、という内容です。
これにより、低所得層の負担はさほど増えない一方で、中間層や特に高所得者層では大幅な負担増となることが特徴です。
より所得に応じた負担となり公平にするという狙いのようですが、要は払える人にはもっと負担してもらおう、ということですね。
具体的には、年収500万円の人は約8.7万円から約10.8万円に増加、最も高い所得区分である年収1650万円以上の人は、約25.2万円から約44.2万円まで引き上げられ、大幅な負担増となってしまいます。
制度改正の背景
これらの改正が行われようとしていた理由は、医療費の増大です。
日本の医療費は年々増加しており、厚生労働省によると、令和4(2022)年度の国民医療費は46兆6,967億円で、人口一人当たりの医療費は37万3,700円となっています。
一人37万と聞くと、すごい金額ですよね。
医療費増大の理由
高齢化
高齢になると病気のリスクが高まり、通院や治療の機会が増えるため、当然医療費も増えます。
医療の進歩
新薬や先進医療の普及により、これまで治療が難しかった病気にも積極的な治療ができるようになり、その分医療費も増加しています。
さらに、日本では紹介状なしに自由に病院を選んで受診できることも、医療費が増える原因の一つとなっています。
外国では、かかりつけ医(GP:General Practitioner)を受診する仕組みがあり、まずGPが診察を行い、必要な治療をしたうえで、専門的な治療が必要な患者だけを専門医へ紹介するというシステムが整っている国もあります。
この仕組みにより、患者が不必要な診察を受けることが減り、結果として無駄な医療費がかかりにくくなっています。
日本でも、紹介状なしでの大病院受診に追加料金がかかるなどの制度見直しが進められていますが、かかりつけ医の役割はまだ定着していないのが現状です。
不必要な薬の処方
今は基本的に治療が落ち着いた慢性期の方と関わっているため、薬の無駄を感じることがよくあり、代表的なケースは2つあります。
まず、冒頭の抗生剤のように、「この薬、本当に必要なのか?」と思うケース です。
特に高齢者は、長年漫然と飲み続けている薬が見直されることなく、処方され続けることがほとんどです。
不調で医者にかかるたびに新たな病気が見つかって薬が増えていくうちに、前回と同じ薬がそのまま処方されるDo処方が続くパターンもよくあります。
また、家にまだ残っているのに毎回同じ薬を処方してもらい、どんどん使わない薬が溜まっていくというのもよくある話です。
患者側が「いらない」と言わない限り、そのまま出され続けてしまうため、大量の湿布や余った薬が自宅に残るという光景も珍しくありません。うちのおじいちゃんちにも湿布たくさんありましたし。
処方はドクターの仕事なので私は口を出せる立場ではありませんし、もちろん慎重に考えて処方してくれる先生もいます。
ただ、定期的に同じ薬を処方し続ければいい患者さんは、病院にとって安定した収益源になるいいお客さんなんだろうな、と感じることもあります。
2つ目は、入院時に持参した薬が使われず、さらに退院時には新たに大量の薬を持ち帰るケースです。
入院すると、持参薬は確認されるものの、多くの場合は使用されず病院内の薬に切り替えられます。
そのため、持参薬はそのまま余り、無駄になってしまうことがよくあります。
さらに、退院時には新たに「退院処方」が出され、持参薬とほぼ同じ内容の薬がまた処方されることも少なくありません。今関わっている利用者さんの場合、入院するとほとんどこうなります。
使わない薬は結局処分されることになるので、医療費をドブに捨てているようなものです。
こうした無駄が生まれるのは、医療費の自己負担が低いことも関係していると思います。
後期高齢者は原則1割負担で、負担額自体が少ないですが、私の住む地域では、高齢や障害を理由に条件を満たせば、医療費の自己負担がさらに軽減される補助制度 があります。
また、子どもの医療費も自治体によっては無料のところが多く、高齢者や子どもの受診時には自己負担をほとんど感じずに医療機関を利用できる状況になっています。
薬の自己負担が高ければ、ちゃんと「湿布は余ってるから要らない。」と言うでしょう。
でも自分の財布が痛まないなら、とりあえず医者に行って薬をもらっておこう、となるのも無理はないですよね。
外国人による制度の悪用
実際の例は少ないようですが、外国人が日本の医療保険を不正利用しているケースがあります。
制度を利用して治療を受けることを目的に来日し、短期間だけ国民健康保険に加入して高額な医療を受けた後に帰国するといった形で利用されているようです。
数は少ないものの、抜け道がある以上今後も悪用される可能性はあるため、外国人の医療費負担をどうしていくかも考えていく必要があるのではないでしょうか。
医療費も自分もこれからどうなるのか
現在、関わることの多い寝たきりの高齢者には、実際に多くの医療費がかかっています。
命の重みは比べられないとはいえ、無駄な医療費が発生する現状に関わっているからこそ、現役世代を含む生きるための積極的な治療を受ける人の負担を増やす方向で高額療養費制度の見直しが進められたことに複雑な思いです。
正直、高額療養費制度が今のまま続けてけるとも思えませんが、こうした無駄をなくしていく取り組みも同時に進めていかなければならないと思います。
今回の改正は見送りになりましたが、今年ももう3月、日本やアメリカでも新しい政権のもと色々と新しいことが決まっていますよね。
それに比べて自分は、ここ数ヶ月、少しずつ化学物理の学習と特許明細書を読むことブログに記事を書くことを続けてきて「何か起きても、とにかく辞めない」という目標のみ達成されているだけです。
もうサポート期間は終わりを迎えます。
続けてきた学習を辞める気は全くないのですが、何も達成されていない現状を変えたいならどうすべき考えなくてはと思いつつ、環境が変化してきてそもそも今後自分がどうなりたいのかがはっきりせず‥受講の感想を書きながらそんなことを考えています。
参照
厚生労働省:令和4(2022)年度 国民医療費の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/22/dl/data.pdf
厚生労働省 高額療養費の見直しについて https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001393881.pdf
オーストラリアの医療 https://unnan-hp.jp/files/libs/3723/202202241129295525.pdf
【意見書】NHK『クローズアップ現代+』「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」 について https://migrants.jp/news/voice/20180803.html?utm_source=chatgpt.com