今の職場で介護施設への入居調整に関わるようになり、「介護施設紹介サービス」というサービスを知りました。
最近テレビのCMで見て、知っている方もいるかもしれません。
今回はこのサービスの仕組みや実際のエピソード、情報について思うことを書いていきます。
紹介サービスの仕組み・問題点
介護施設紹介サービスは、利用者や家族からの相談を受けて、介護施設を紹介するサービスです。
紹介会社が本人や家族の希望する条件から候補の介護施設を探し、見学の手配などを代行してくれます。
利用者は無料で利用でき、入居が決まると施設側が紹介会社に紹介料を支払うシステムとなっています。
紹介料は施設や地域によって異なりますが、数十万円〜100万円以上になることもあります。
要介護度が高い方や難病の方など、より多くの介護・医療サービスを必要とする人ほど、入居後の収益に繋がるため高額な紹介料が設定されているという実態があるようです。
こういった現状は先月ニュースでも取り上げられ、国会で問題提起されている場面もありました。
その報道によると、100万円以上の紹介料を請求する紹介会社が多く存在し、人身売買のようにもなっている、とのこと。
紹介業者は全国に500社以上あると言われていますが、届け出は不要なので、誰でも始められてしまい規制するのが難しいようです。
私が気になったのは、以下のような問題点です。
●高額な紹介料を払えない施設は、介護施設として健全でも、経営が厳しくなってしまいます。
●紹介料の高さを理由に施設を勧められることもあり、利用者のニーズに合わない施設に誘導される可能性もあります。
●一人あたり100万円にもなる紹介料を払うのは回収できる見込みがあるからです。そのために不必要な介護・医療サービスをフルに詰め込み、利用料をとっている施設も存在しています。
紹介のトラブル
入院をきっかけに施設へ入居される方は多く、通常は病院のソーシャルワーカーさん(MSW)が患者さんに合った施設を提案し、病院―家族―施設の三者で連携しながら調整が進むという流れになります。
しかし最近では、ワーカーさんの対応の仕方や病院側の方針にもよるのか、入院中でも家族が自ら紹介会社に依頼して施設を探すケースも見られるようになりました。
そんな中、実際に私が関わったケースでいくつかトラブルがありました。
ネット検索から紹介会社につながってしまった例
病院から「この患者さん、入居できそうですか?」と施設へ連絡があり、空き状況の確認とともに、患者さんの大まかな情報が伝えられました。
それを受けて、施設側が「入居可能です」と病院へ返答しました。
その後、病院からご家族へ「入居できそうなので、一度施設を見学してみてください」と案内があり、施設側はご家族からの見学予約の連絡を待っていました。
ここまでは、入居調整のよくある流れで進んでいたのですが‥
見学予約の連絡をしてきたのは、ご家族ではなく紹介会社でした。
施設側が「すでに病院と直接のやり取りが進んでいる」と説明しても、「問い合わせがあったので、こちらを通してやり取りしてほしい」と紹介会社が主張してくる事態に。
家族に確認したところ、
電話番号が分からずネットで検索したら、施設の公式サイトではなく紹介会社のページが出てきたため、そのサイトの“問い合わせはこちら”という連絡先に電話した、
とのことでした。
過去の問い合わせを紹介扱いされた例
また別のケースでは、ご家族が「入院中に施設を探さないといけないかも」と思い、早い段階で紹介会社に相談していたことがありました。
ただその後、入院が長引き、最終的には紹介会社を介さず入居調整が進んでいました。
ところが、ご家族から施設が決まりそうと聞いた紹介会社から「以前にうちがそちらを紹介した」と連絡が入ったのです。
どちらのケースも、最終的には事情を説明して紹介会社には手を引いてもらえました。
しかし、施設側は『紹介してもらう立場』であるため、今後のことを考えると強く出られないのが現状です。
紹介サービスは本当にお得なのか?
介護施設探しは、多くの人にとって突然のことであり、しかも初めての経験であることがほとんどです。
戸惑う中で、誰かに任せられることはとてもありがたく感じるのだと思います。
近年病院の在院日数は短くなっており、急性期の治療が終わると、すぐに退院しなけばなりません。
そのまま自宅に帰るのが難しい場合は、別の病院へ転院したり、同じ病院内の地域包括ケア病棟に移ったりする流れがよくありますが、それでも入院期限があるため、ゆっくり施設を選んでいる余裕はありません。
さらに、予算内で、いいな、と思えるような施設は、たいてい空き待ちとなります。
そんな中、不安で焦るけど忙しくて時間もない、というご家族にとって、紹介サービスの存在は心強く感じるでしょう。
しかし、最近の報道からは、そうした利用者の気持ちに寄り添っているように見えて、実は自分の利益を優先している紹介会社が存在しているという実態もあるようです。
このような仕組みは、介護施設の紹介会社だけでなく、保険相談や転職エージェントなども同じです。
私も転職の時、転職エージェントを利用したことがあります。
当時はとても便利に感じてサービスにも満足していましたが、その仕組みを知った上で振り返ると、「本当に自分に合う職場を紹介してもらえていたのか?」と疑問も出てきました。
また、今の職場で人事の方の話を聞く中で、紹介で面接に来た人は、「紹介料を払ってでもこの人を雇いたいか?」という目でも見られていることを知りました。
紹介サービスは、知識のあるプロに任せられる安心感や、面倒なことを代わりにやってくれるうえに無料、というお得感もあり、多くの人に利用されているのだと思います。
ですが、その仕組みを知らないまま利用してしまうと、知らない間に損をしてしまうこともあるのではないでしょうか。
情報との向き合い方
今回お話しした介護施設の紹介サービスは、一見「無料で親切なありがたいサービス」ですが、実際には施設側が高額な紹介料を払っており、その仕組みを知ると見方が変わってきます。
もちろんすべてのサービスが悪意を持っているわけではありませんが、相手に利用されるのではなく、仕組みを知った上で「うまく使ってやる」くらいの気持ちで利用した方がいいかもしれません。
私はここ数年講座で学ぶ中で、情報との向き合い方が変わってきました。
情報があふれ、Alが何でも答えてくれる今の時代は、何かを知っていること自体には価値がなくなってきていて、大切なのは、情報をどう見極めてどう活かすか、だと感じています。
情報との向き合い方は日常のどの場面でも気をつけなければなりません。
情報対して、「誰が何のために伝えているのか」「自分に本当に必要な情報か」をちゃんと考えて向き合うことを意識していきたいです。
また、私の仕事の中で、「調べてみたけど、これってどうなんですか?」と、医療的なことに対して自分で情報収集した上で強く主張される方も増えています。
今は医療の情報も簡単に手に入るため、偏った間違った情報を正しいと信じているケースもあります。
私自身、現場でそうしたやり取りをする中で、「相手の状況や理解に合わせ情報を正しくわかりやすく伝える力」がこれからますます求められるなと感じています。
〈参照〉
厚生労働省 病院報告 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/byouin/m23/dl/2303kekka.pdf