今月のシルバー新聞で、外国人人材による訪問系介護の従事が解禁されたという記事を読みました。
近年、日本の介護現場では人手不足もあり、外国人人材が増えてきていますが、実は、在宅の現場で働くことに関しては大きな壁がありました。
この記事では、新聞記事の内容を紹介しながら、それについて私が感じたことも書いていきます。
記事の内容
これまでは在宅の一対一のケアにおいては専門性の高さから、介護福祉士資格を持つ外国人や、EPA(経済連携協定)介護福祉士に限り、外国人の就労が認められていました。
それが今年4月から、訪問介護事業所でも人材確保が難しくなってきたことを受けて、条件付きで規制が緩和されることになったようです。
対象となるのは、訪問介護や訪問入浴などの訪問系サービスです。
外国人人材を受け入れるためには、次のような条件があります。
- 訪問系サービスの基本事項、緊急時対応、ICT活用などに関する研修の実施
- 生活様式や日本語についての研修も実施
- 様々な支援体制の整備
- 2か月以上の同行訪問
- 利用者本人と家族の同意が必要
- 初任者研修を修了し、かつ実務経験が1年以上あること
解禁とは言っても、このようにいくつもの条件が設けられており、単に人手不足を解消するだけでなく、一定の質を保つために慎重な検討がなされているようです。
思ったこと
まず思ったのは、このような体制を整えられるステーションは限られており、簡単に外国人を雇って人手不足を解消する、というわけにはいかなさそうだということです。
すでに2024年の介護報酬改定により、小さな訪問介護ステーションは存続の危機となっています。
こうした取り組みで人手不足を解消して利益を上げていけるのは、もともとグループ内で外国人を雇用した実績があるような大手企業に限られるのではないでしょうか。
また、特に高齢の方に多い外国人への抵抗感も、今後の課題になるかもしれません。
日本において外国人介護士の存在は、すでに珍しいものではなくなってきています。
それでもまだ、
「高齢者が外国人を嫌がるのではないか?」
「文化や言葉の壁もあり、ちゃんとやってもらえるのか?」
といった今までの常識が根強く残っている印象を受けます。
しかし、人口減少により人手不足はますます深刻になっているため、このようなことを言っている場合ではなくなってきているのでしょう。
外国人人材だけでなく、ロボットなどテクノロジーの導入に対しても、
「冷たい感じがする」
「やっぱり人の方がいい」
といった感情論的なことが語られることもありますが、これも同じだと思います。
外国人介護士や介護ロボットに抵抗を感じることは、時代の変化に取り残されつつあると言っても過言ではありません。
とはいえ、理想通りにはいかない現実もあると感じます。
今は外国の方と働いていませんが、病院勤務時代、特に中高年層の患者さんは、外国人に対して抵抗感を持つ方が多い印象がありました。
全員ではないものの、外国人スタッフの対応は「あまりよくないのが当たり前」という空気があったのも事実です。
だからこそ、ただ数を増やすだけでなく「外国人だからこそできる介護」を考えるといいのでは、と思います。
個人的な意見になりますが、介護現場に多いフィリピンの方について言うと、明るく細かいことを気にせず、親しみやすい人が多い印象です。
また、女性が働くのは当たり前という考え方なので働き者が多く、家族を大切にする文化もあるように感じます。
こうした違いや強みに需要がある、という例もあります。
例えば、家事代行サービスでは、「日本人のスタッフだとプライベートを見られるのが恥ずかしい」という理由から、あえて外国人スタッフを指名するケースがあると聞いたことがあります。
これって、何となくわかる気がしませんか?
日本人は空気を読んだり気配りをしたりするのが得意なため、細かく観察されているように感じることもあります。
特に自分の家という究極のプライベート空間では、そうした気配を嫌がる人が多いのではないでしょうか。
また、正しい敬語や言葉遣い、話し方などは、日本人同士だとつい厳しく見てしまいますが、外国の方であれば、伝わればそれほど気にならないこともあります。
介護の現場でも、温かくフレンドリーでありながら、いい意味で日本人ほど細かく詮索されないことを、心地よいと感じる高齢者が増えてくるかもしれません。
これからの日本の介護現場には、そんな違いを生かす視点で、新しい当たり前を作っていくことが求められているのではないでしょうか。
参照
シルバー産業新聞 (2025年4月10日).外国人人材の訪問系従事 解禁